カリオストロ伯爵夫人
皆さん、こんにちは。
今日はモーリス・ブラウン著のルパンの小説からのご紹介です。
私が子供の頃、推理小説が大好きで、シャーロック・ホームズやルパンなどの推理小説を、学校の図書館はもちろん近くにあった市立図書館にあったものすべてを読破した思い出があります。最近ふとまたルパンの小説が読みたくなり、アマゾンで買ったりして読んでみて、またはまってしまい、ここ最近で10冊以上読みました。今日はその中でも特に面白かった「カリオストロ伯爵夫人」の中からご紹介します。この小説は下記のように紹介されています。
『カリオストロ伯爵夫人』は、モーリス・ルブランの『アルセーヌ・ルパン』シリーズの一篇。
20歳のアルセーヌ・ルパンの冒険を扱った物語。
「カリオストロ伯爵夫人」は作品に登場する謎の女性。マリー・アントワネットが巻き込ま
れたことで有名な、怪人物カリオストロ伯爵の娘だという「カリオストロ伯爵夫人」と、怪人
物ボーマニャン、ラウールこと若き日のアルセーヌ・ルパンが、 フランス修道院の財宝を
巡って三つ巴の争いを演じる。
この小説の中で、カリオストロ伯爵夫人は、実際はかなりの年齢のはずなのに、その容姿は10代か20代のようで、「聖母の微笑を持つ、この世で最も優雅な完全美の化身」であるとされています。その不思議について、小説の中で語られていたのが、次の下りです。
鏡をとりあげると、女は、疲れて、老けた自分の顔を長いあいだ見入っていた。そして
鏡のなかの自分とにらめっこをしていた。こうして、沈黙といっさいの思考と意志とを、
眼差しひとつに集中する努力のうちに10分が過ぎ、15分がすぎた。そして最初に現れ
たのは、冬の陽の光線のように、ためらいがちな、それともわかぬ内気そうな微笑だった。
それがまたたくまに、さらに大胆になり、すみずみまで生気がみなぎってきて、ラウール
の目を驚かせた。口の隅がさらに反り返った。肌には血の気がさしてきた。筋肉がさらに
引き締まってきたように見えた。頬や、顎の線が、さらにくっきりと浮きあがり、あらゆる
優雅さが、彼女の美しくやさしい顔に輝き出た。奇跡がなしとげられた。「奇跡だろうか」
ラウールは心中で呟いた。「そうではない。それは意志力の奇跡だ。降参することをうけ
がわず、混乱と心弱りのあるところ、常に秩序と規律とを立て直そうとする、断固として
執拗な思考の力なのだ。あとは小瓶も摩訶不思議な霊薬も、たんなる芝居の小道具に
すぎない」
(カリオストロ伯爵夫人 p.128から引用)
この中で、私が特に強い印象を受けたところは、「沈黙といっさいの思考と意志とを、眼差しひとつに集中する努力のうちに10分が過ぎ、15分がすぎた」と、「そうではない。それは意志力の奇跡だ。降参することをうけがわず、混乱と心弱りのあるところ、常に秩序と規律とを立て直そうとする、断固として執拗な思考の力なのだ」という箇所でした。
長くなりました。最後まで読んで頂きありがとうございました。
ではまた来週。
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