2011年09月08日
情熱のタンゴ
「踊りませんか?」の本からのご紹介シリーズで、ワルツとルンバの次にご紹介させて頂くのは、やはり「情熱のタンゴ」でしょう。ダンス愛好家の方達に、モダン種目としてワルツと並んで人気のあるのがこのタンゴです。
|男女の相克
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|ワルツをオデット姫が姿を変えた清楚な白鳥にたとえるとしたら、タン
|ゴは暗い情熱の炎を放つ黒鳥の姿だろうか。
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|映画「ラストタンゴ・イン・パリ」に衝撃を受けなかった人はいないに
|ちがいない。タンゴそのものが主題の映画ではないが、唐突な男女の出
|会いと情念の炎が妖しく燃え上がる様は、まさにタンゴの影法師。性と
|死のメタファーが激しく肢体を絡めて踊っているかのようだ。タンゴと
|いう音楽と踊りのエスプリを西欧の視線がどう捉えていたのかが読み取
|れ、実に興味深い作品である。
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|タンゴのイメージは強烈だ。ワルツの幸福感や軽やかさからはほど遠く、
|激しいと同時に、娼婦の突き放したような冷ややかな視線も感じられる。
|モダン種目の中でも最もドラマティックな踊りである。
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| (浅野素女 著「踊りませんか?」第3章 p72から引用)
ダンスを既にされておられる方はご存じのように、モダン5種目のうちタンゴだけがホールド(組み方)が異なっています。どのように違うかと言うと、タンゴ以外の種目では女性の左手は男性の右肩の上に乗せて、軽くつまむようにしますが、タンゴでは女性の左手は男性の肘に引っかけて、手のひらは男性のワキの下に水平に当てたうえで、強く挟むようにします。
踊るときの表情もタンゴと他の種目は対照的です。ワルツなどの種目を踊るときには、男性も女性も微笑みを浮かべながら優雅に踊りますが、タンゴでは、男性は唇を噛んだり歯を食いしばったような強い表情をして、女性も笑顔ではなく、キリッとした毅然たる表情をします。
このあたりを、「唐突な男女の出会いと情念の炎が妖しく燃え上がる様は、まさにタンゴの影法師」と表現した浅野女史の感性の豊かさは、素晴らしいと思いました。
さぁ、そこでパソコンの前に座りこんでおられるあなた、あなたも私とタンゴを踊りませんか?
